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イイオンナになるために、日々修行中


by kaokaolululu
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雑踏の着物姿。

恥ずかしながら、新聞をじっくり読む時間がありませぬ。
テキトーに流し読みして、廃品回収に・・・。
紐でまとめるときなど、「あ~、めんどくさっ!もう新聞やめよっかな~。」
なんて、フトドキなことを考えたりいたします。

・・・が、
やっぱり「さすがだなぁ」と思う文章にめぐり合えるのも新聞。
そういう名文は、ネット上で読むより
紙で読んだほうが心に残る気がするのです。

日曜日。
あんまり時間がないけど、朝、紅茶を飲みつつ天声人語を読みました。



冷凍庫を整理し、お宝を見つけることがある。
旅先で買った干し烏賊だったり、作りすぎたパスタソースだったり。
冷凍物と蔑むなかれ。
解かせば懐かしい時の恵みである。
東京紙面の投稿欄「ひととき」に、「私の日本語は冷凍品」なる一文があった。
オットの転職で1960年に渡米し、
ニューヨーク近郊で半世紀を過ごした江崎真佐子さん(81)からだ。

「ら抜き」表現の広がりを小欄で知り、驚かれたらしい。
この方の日本語は米国に持ち込んだ時の状態という。
「後生大事の母国語が、えたいのつかめぬものへと変身中の今、
私の言葉は地球温暖化で徐々に沈む南方の島のごとく、
立つ瀬をだんだん失っています」と
結ばれていた。

拝読し、欧州暮らしで世話になった女性の物腰を思い出した。
やはり若くして日本を離れ、外国人を伴侶にした人である。
たとえば銀幕の原節子さんみたいな、美しい日本語の使い手だった。
愚息が小学校を病欠した時、
「お具合いかがですの」と聞かれたことがある。
快方に向かっている旨伝えると、満面の笑みで「奥様もお喜びで」。
ただの風邪なのにと思いながら、ほっこりさせられた。
雑踏で着物姿を見かけた時のように。

異境の江崎さんも、そうした言葉たちと年を重ねたのだろう。
肩書きに大学生とあり、八十路にしてなお前向きの人生が浮かんでくる。
立つ瀬がないどころか、お持ちの「冷凍品」こそ貴重この上ない。
語り部として、傷む前の大和言葉を「ら抜け」世代のお伝え願いたい。



たま~にCATVで原節子さんの映像を見かけることがあります。
見目麗しいことはもとより、
その物腰のやわらかさ、
首をすこ~し傾けて、ほんのり笑う姿。
そしてなにより、その日本語の美しさとそのテンポに
うっとりとしてしまいます。

着物姿は決してきちんと着ておられるわけではなく、
どちらかというと「くったり」した様子に思われました。
でもきちんとした印象があるのは、その日本人としての姿勢かなぁ。

あこがれたところで、原節子さんのようにはなれないけれど、
わたしが着物を着たところで、
「お具合いかがですの」と発したところで
原節子さんのようには決してなれないけれど(笑)、

でも、
せめて
雑踏の着物姿くらいには、なれるんじゃないかしらん?

着物を着ている姿を見た人が、
「あ、いいな」と思ってもらえるように、
そんな存在になりたいな。
by kaokaolululu | 2011-10-25 08:17 | ひとりごと